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キス魔な彼女と草食系僕三十四話

体育祭が近付くにつれ、学園内もにわかに盛り上がって来た。

僕達の出る種目も決まり、皆忙しそうにしている。

僕自身も昼休みや放課後に毎日様々な用事が出来ていて、全てをこなした頃には、もう泪が部活を終える時間になっていることが多かった。

「ショウ、疲れてる?」

部活を終えて着替えた泪が僕に訊く。

「いや、疲れてはないけど‥‥どうして?」

「いや、忙しそうだからさ」

「あんまり無理しちゃダメですよ?」

いつの間にか隣に来ていた億川さんが僕を心配そうな表情をしながら言う。

「億川さん、それ、私の台詞」

「私も心配なんです」

泪が不満そうな顔で言った言葉を、億川さんは笑顔で流す。

「無理なんてしてませんよ。大丈夫ですから」

僕が億川さんを心配させないように笑顔で返すと、泪はますます不満そうな表情になる。

「泪、どうかしたの?」

「別に、どうもしないけど。億川さんと仲良いなって、そう思っただけ」

泪は面白くなさそうに答える。

「仲良いって‥‥そりゃ友達だからそうでしょ」

泪だって億川さんとは仲良いし。

泪はそっぽを向く。

「あ、あれ、三十木さん‥‥ですよね?」

億川さんがなぜか慌てたように指差した先には、重そうな荷物を持っていた三十木さんがよろよろ歩いていた。

大変そうだ、と思った時にはもう体が動いていた。

三十木さんの方に駆け寄って、三十木さんが持っていた荷物を持つ。

見た目通り凄く重い。

「あ、ちょっと‥‥」

「持ちますよ‥‥どこまでですか?」

「大丈夫ですよ‥‥お気遣いなく」

「気遣ってなんてないですよ。僕がやりたいだけです‥‥ダメですか?」

僕がそう言うと、三十木さんは「まぁ、それなら良いですけど」と無表情のまま言う。

「どこまで持って行けばいいんですか?」

「教務室までです」

三十木さんはそう言うと前を歩き始める。

僕も後に続き、しばらく会話をせずに歩き続ける。

廊下を歩いていると、中等部の生徒が三十木さんと僕を見て驚いたような表情をしてひそひそと話をしている。

「‥‥皆、こっちを見てますね」

「私が誰か連れているのが珍しいんだと思います」

三十木さんはあまり周りの反応を気にしていないようだった。

「‥‥どういうことですか?」

「いつも私が一人でいるので、九重さんが私の後ろに着いて来るという映像が珍しい、という意味です」

三十木さんはこっちを一切見ないで言う。

「いつも一人‥‥なんですか?」

「嫌いなんですよ」

そう言うと三十木さんは初めて立ち止まり、僕の方を向いた。

「‥‥人間というやつが」

そう言うと三十木さんは前を向いてまた歩きだす。

「人間が‥‥嫌い?」

僕は三十木さんを追いかけながら訊く。

「ええ」

「何で‥‥ですか?」

僕が横に並ぶと、三十木さんは歩みをとめずに、僕の方を向いた。

「‥‥汚くて醜いからですよ」

呟くような小さな声だった。

「九重さんは、人間が好きですか?」

「僕は‥‥」

そんなこと、考えたこともなかった。

どう答えたらいいか、必死に頭を使って考える。

「‥‥考えたことないんですね、そういうこと」

三十木さんが僕の心の中を見透かしたように言う。

「それは、とても幸せなことだと思いますよ。人間が人間を嫌いになるほど大変なことはないですから‥‥」

三十木さんはそう言うと、よく見ていないと分からないくらい僅かに、無表情以外の表情になった。

それは、寂しそうな表情だった。

「三十‥‥木さん‥‥」

「着きましたよ」

三十木さんは再びいつもの無表情に戻すと、立ち止まった。

「ここまでで結構ですよ」

「最後まで付き合いますよ」

「ですが‥‥億川さん達を待たせてるんじゃないですか?」

「あっ‥‥」

すっかり忘れてた‥‥

「多分、お二人共待ってると思いますよ」

泪は機嫌悪かったし、かなり苛立ってるだろう。

「あ、はい、じゃあ後はお任せします」

「はい。ありがとうございました」

三十木さんはそう言って礼儀正しく頭を下げて、教務室の方を向いた。

「あ、あの!」

分かれる前に、言わなきゃいけないことがあった。

「何ですか?」

三十木さんがこちらに振り向く。

「人間が好きとか‥‥嫌いとか‥‥僕にはよくわかりませんけど‥‥でも僕は、三十木さんのこと、好きですよ」

僕がそう言うと三十木さんは一瞬、ほんの僅かにびっくりした顔をして、すぐ元の無表情に戻る。

「私も‥‥九重さんのこと、嫌いじゃないですよ。億川さんや遥さんと、同じ雰囲気ですから‥‥」

そう言うと三十木さんはほんの僅かだけ、微笑んだ。

それは、文字にするならほんの僅か頬を緩めるだとか、その程度のことだった。

でも、その微笑みは、多分この世で一番綺麗な笑みだった。



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